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バーチャルYouTuberの現状やビジネスの可能性を探る。4名のキーパーソンが意見を交わした「コンテンツビジネス東京2019」のパネルディスカッションをレポート
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印刷2019/04/06 18:31

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バーチャルYouTuberの現状やビジネスの可能性を探る。4名のキーパーソンが意見を交わした「コンテンツビジネス東京2019」のパネルディスカッションをレポート

 2019年4月3日〜5日,コンテンツビジネスの総合展示会「コンテンツビジネス東京2019」が,東京ビッグサイトで開催された。本稿では,会場で行われたパネルディスカッション「バーチャルYouTuberが切り開く,コンテンツビジネスの新たな可能性」の模様をお伝えしよう。

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「コンテンツビジネス東京2019」公式サイト


中島健登氏
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 ディスカッションでは,パネリストとして大坂武史氏(Activ8 代表取締役),荒木英士氏(グリー 取締役 上級執行役員/Wright Flyer Live Entertainment代表取締役社長),前田真太郎氏(サントリー コミュニケーションズ 宣伝部デジタルグループ 燦鳥ノムプロジェクト リーダー)の3人が登壇し,各社のバーチャルYouTuber(以下,VTuber)の取り組みを紹介しつつ,今後の可能性などについて意見を交わした。
 パネルディスカッションのモデレーターは,VR動画配信サービスやVTuber「桜美ゆな」などを手がける360Channelの代表取締役社長,中島健登氏が務めた。

 Activ8では,2016年12月よりVTuber「キズナアイ」の活動を展開している。大坂氏によれば,現在はキズナアイを「バーチャルタレント」と呼び,リアルのタレント同様のマネジメントを行っているという。その背景には,デジタル化が進む現在,バーチャルリアリティ空間に多くの人々を誘引するキラーコンテンツとしての存在を確立する,という意図があるとのこと。

大坂武史氏
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 キズナアイは現在,YouTubeのゲーム実況とバラエティ番組の2つのチャンネルで活動しており,チャンネル登録者数は400万人におよび,国内ではトップ20位前後にランクされている。
 そんなキズナアイが最初に注目されたのは,日本ではなく海外だったという。現在も国別のファン比率では日本が30%弱で,残り70%以上は中国やアメリカなどだ。これについて大坂氏は,「アニメ調のキャラクターなので,さまざまな国や地域の人に受け入れられやすいのではないか」と分析する。

 キズナアイは,2018年から訪日観光促進親善大使を務めたり,テレビの冠番組を持ったり,テレビコマーシャルに出演したりと,リアルタレントのような活動を展開。加えて音楽アーティストとして,楽曲のリリースや4000人規模のライブコンサートも開催している。
 またActiv8では,キズナアイ以外のバーチャルタレントや,バーチャルタレント支援プロジェクト「upd8」(アップデート)も展開中だ。

 Wright Flyer Live Entertainmentは,グリーの100%子会社で,VTuberおよびVTuber専用ライブ視聴・配信アプリの「REALITY」などを手がけている。荒木氏は,VTuberを現実のシンガーや俳優の代替的な存在ではなく,「今後起きる大きな変化のスタート地点」と捉えているという。
 例えば多くの人が同じSNSでも目的別にアカウントを使い分けているが,それはつまりパーソナリティを使い分けているということだ。荒木氏は,今後,技術の進化によって現実の空間とバーチャル空間をオーバーレイして生活する時代が来れば,そうしたパーソナリティに身体性を持たせる必要性が生まれるとし,今活動しているVTuberはその最初の事例であるという持論を述べた。

荒木英士氏
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 そうはいっても,普通の人達がVTuberとして活動するための技術的なハードルは,依然として高い。そこで同社では,スマートフォン1つで誰でもVTuber活動ができるプラットフォームとして,REALITYを展開しているというわけだ。
 荒木氏は,REALITYの特徴として,従来のテキストチャットやボイスチャットに加えて,視聴者が贈ったギフトがリアルタイムで画面内に投げ込まれる様子が見られるなど,映像や空間を使った演出でコミュニケーションが図れることを挙げた。

 Wright Flyer Live Entertainmentでは,VTuberを使ったコンテンツの制作も手がけている。具体的な例として,VTuberをゲストに招き,トークや楽曲を披露するテレビの音楽番組風の生配信コンテンツが紹介された。それだけではテレビと変わらないが,こちらでもギフトなどを使ったリアルタイムの演出が施されており,それによって差別化を図っているという。
 荒木氏は「同じような生番組をテレビでやるには,100人近くのスタッフが必要になる。でもバーチャルコンテンツなら,簡単な作業とまでは言わないが,4〜5人で作れるし,出演者が同じ場所に集まる必要もない」というメリットを示した。

 前田氏のサントリーコミュニケーションズでは,2018年8月からサントリー公式VTuber「燦鳥ノム」を展開しているが,燦鳥ノムプロジェクトは「テクノロジーを使って新しいことにトライしてみよう」という,社内のチャレンジ企画の一環としてスタートしたそうだ。2018年1月に前田氏がキズナアイと出会い,2月にVTuberを使う企画をまとめ,4月にGOサインが出て,8月にデビューという流れだったそうで,企業がゼロからVTuberを作った事例としてはほぼ最短のコースをたどったという。

前田真太郎氏
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 燦鳥ノムは,8か月でYouTubeのチャンネル登録者数が8万を超えており,企業の公式VTuberとしては異例の人気を誇る。前田氏はその理由を,「タレント活動にある」とした。つまり,燦鳥ノムのチャンネルで展開しているゲーム実況やサントリーの広報活動などより,上記のWright Flyer Live Entertainmentが手がける配信コンテンツへの出演や,楽曲アーティストとしての活動のほうが,認知度を高める要因になったということだ。
 ちなみに燦鳥ノムは,企業公式VTuberの事例としてテレビの報道番組で取り上げられたが,そのことがチャンネル登録者数を増やしたりはしなかったという。

 サントリーは,燦鳥ノムを,オウンドメディア(自社で情報発信を行うメディア)と捉えているとのこと。前田氏は,「YouTubeをオウンドメディアとして活用している企業はまだ少ないが,実現できれば動画で情報を伝えられるし,また視聴者と定期的にコミュニケーションが取れる」「単なる広告とは異なり,燦鳥ノムの動画を見てもらうことで,サントリーや商品に対する親近感や理解が高まるのではないか」と述べた。

 こうした事例に見られるように,VTuberが注目される理由について大坂氏は,情報の発信者がなりたい自分や見せたい自分になれる,もしくはファンが求める外見にできるというメリットをがあるとした。またVTuberは,実際のタレントのように病気や不祥事,あるいは引退といったリスクが少ないという利点もある。
 さらに,デジタル化が進むさまざまなメディアで,タレントをデジタル化したVTuberの親和性は高いという。とくに日本では,アニメやコミック,ゲームの派生分野としてだけでなく,「次のコンテンツ」として注目している人や企業も多いそうだ。

 今後,著名人が自身のVTuberを使って活動する可能性も増えていくだろうと大坂氏は予想した。大坂氏は,音楽アーティストのポーター・ロビンソンさんが,バーチャルタレントを使ったプロジェクト「ヴァーチャル・セルフ」を立ち上げて活動の場を広げていることを紹介し,「アーティストやタレントは,自分が活動することでしか利益が得られない。自分が活動していないときもビジネスができるように,架空のキャラクターを作るというケースは増えていくのではないか」という見解を示した。

 これに関連して荒木氏は,ジャニーズ事務所の例を挙げた。ジャニーズ事務所は2019年2月から所属アイドルを使った「バーチャルジャニーズプロジェクト」を展開しているが,「Twitterのフォロワーなどを見ると,従来のVTuberファンと,ジャニーズのバーチャルタレントのファンはほとんど被っていない。これまでまったくバーチャルタレントに関心がなかった層にアピールできている」と分析した。
 また大坂氏も,「バーチャルだからこそできるコミュニケーションがある。現実では,ファンが渡してくれたお菓子をその場で食べるなどということは絶対に無理だが,バーチャルならそれを体験できる。とてもいいチャレンジだ」と評した。

 前田氏は,サントリーが日本eスポーツ連合のオフィシャルスポンサーを務めるにあたり,燦鳥ノムをサントリー公式eスポーツアンバサダーに起用したことを紹介した。起用の理由として前田氏は「eスポーツファンやゲーマーに親しみを持たれる」「サントリーの活動を燦鳥ノムが紹介することで,より分かりやすくなる」と説明した。
 これについて大坂氏は,「VTuberは世界観を壊しにくいのでゲームと相性がいい」としつつ,「実はVTuberがリアルの場に出ても違和感は少ない。実際のタレントとの共演も,結構なじんでいる」と語る。荒木氏も「日本人は,キャラクターに生命が宿ることに抵抗感があまりない。昔からサザエさんやドラえもんのような有名キャラと実写を絡めたテレビコマーシャルが存在しており,それと同じだと思える」と話していた。

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 VTuberが出演するバーチャルライブの意義について問われた荒木氏は,「現実の会場に行くのも,端末で視聴するのもそれぞれ異なる楽しさがある。どちらが上という話ではなく,違う魅力を持つ選択肢が増えるのはいいこと」だと説明した。
 現在の音楽業界はCDなどの音源を販売するだけでは売上が見込めず,ライブと物販で収益を挙げる構造になっている。荒木氏は「多くの観客を集めないと黒字にできないが,大規模会場に集客できるアーティストは限られる。また,そうした大規模な会場は,すでに日程が埋まっていることが多い」という課題を抱えていることを指摘。その一方,バーチャルライブならコストがかからないので小規模でも黒字化できるし,大規模な公演にも対応できると述べた。

 ディスカッションではまた,VTuber同士の関係性は今のところ不明だが,仲がいい悪いといった設定があれば個性に広がりが出て面白いという意見や,企業公式VTuberが既存のマスコットキャラと違うところは,現実のタレントのようにさまざまな活動を通じて知名度を高められる点にあるという指摘も出た。

 話題は,今後の展望におよんだ。大坂氏によれば,Activ8では次世代通信規格の5GやVRの発展を見据え,フルCGを使ったVRライブにも注力していくという。海外展開にも力を入れ,その過程では衣装や髪型などの外見や言葉などを,展開する国や地域に合わせて最適化するという。

 荒木氏は,VTuberの音楽ライブやテレビ出演が増えていることに関連して,「多くの人が見ているコンテンツにも,人間とVTuberが共存する場面が増えていくのではないか」と予想した。「今はまだバーチャルという存在が新しいので別枠で捉えられがちだが,近い将来には現実の人間を起用したほうがいいのか,それともバーチャルタレントが向いているのかといった判断が選択に組み込まれるようになる」と語った。

 また前田氏は,リアルとバーチャルの境目がなくなる時代を迎えたときにバーチャルキャラクターを作ろうとしても,なかなか追いつけないとし,「先を見据える意味でも,企業がVTuberを持つ意味がある」とコメントした。そして,燦鳥ノムの動画に他社の広告を入れて収益化ができないか試していると明かし,「タレント活動で自給自足できて,自社の広報活動にも使える存在になるのが夢」と話した。

 ディスカッションの最後に前田氏は,燦鳥ノムの起用を希望するコンテンツやイベントがあれば,積極的に検討したいと意気込みを見せた。
 また荒木氏は,VTuberが盛り上がっていることで参入する人や企業が増えるのはいいことだが,その一方で競争が激化し,単に「やってみました」だけでは話題にならなくなってきたと指摘。「本当にハイクオリティなものでないと,見向きもされない」と厳しい見解を示した。
 大坂氏は,「今後,バーチャルタレントのコンテンツを作る環境は技術の発展とともに整っていく。今以上に良くなるという期待を込めて,ぜひ触れてほしい」と語ってディスカッションを締めくくった。
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